石野葉穂香です。
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、震災復興を目指して歩もうとする多くの人たちの足もとに、さまざまなカタチで、からみついてきます。
あの事故さえなければ、津波被害からの復興に、もっと多くの力や心を集められたかもしれません。
でも、もう起きてしまったことです。今も現場では、多くの作業員の方々が、危険と背中合わせの中で、懸命に闘っています。
とにかく一刻でも早く、そして正しく、間違いのないように収束させてほしい……と、福島の人も、日本中、世界中の人が祈り、願っています。
一方、漏れ出した放射能に対し、私たちは、正しく付き合っていかなければなりません。
過小だったり過敏だったりする情報に振り回されないで、正しい数値、正しいデータを元にして、正しく判断しなければいけません。
「風評被害」は、東北地方をはじめ東日本の広い範囲で、農林水産物の出荷への「足かせ」になっています。
「〝お上〟の出してくるデータは信じられない」という方も多いみたいです。
誰の言うことが正しいの? と不信が増幅しています。
では、漁港という〝最前線〟で測定されるデータはどうでしょう?
8月30日、石巻魚市場株式会社の仮設事務所で、水揚げされた魚をまるごとコンベアーに載せて、センサーを通過させることで放射能の測定ができる機器がお披露目されました。
これは、東北大学生活環境早期復旧技術研究センターと石巻魚市場が、昨秋から実用化を目指して開発を続けてきたもの。
全国でここにしかない〝オリジナル〟の機器です。
名前はちょっと長めですが「連続個別非破壊放射能汚染検査システム」といいます。
ベルトコンベアーが延びる全長約12mの機器で、ベルトの下、約8mに渡って放射能センサーが120本設置されています。
ベルトコンベアーの上を、2.5秒に1匹ずつ魚を載せて送ると、機器の出口では、1㎏あたり100ベクレル以上(国の基準値)、50ベクレル以上(要注意値)、そして50ベクレル未満(安全)の、3つに自動的に振り分けられます。
石巻魚市場では、現在、毎朝4時から、放射能測定検査を行っています。
その方法は、魚数匹をすりつぶしてミンチ状にした検体を最低1㎏つくり、それを測定器に入れ、30分以上かけて検査するという方法です。
午前4時というのは、セリが始まる2時間半も前。セリが安心して行われるようにするためです。4時から検査を行う漁港は、日本中でも石巻魚市場だけです。
しかし、検査のためだけに、とれたての魚を何匹もミンチにして、最後には捨ててしまう、というのは非効率的だし、何より〝もったいない〟ことです。
しかも、ほとんどは放射能「不検出」。大事な資源をすりつぶして、食べずに捨ててしまうなんて、漁師さんにしてみたら、たまったものではありません。
(バラされるだけでゴミにされる魚もかわいそうです)
でも、「連続個別非破壊放射能汚染検査システム」は、魚体を順番に流すだけ(連続)、しかも一体ずつ(個別)、魚も解体しなくてよい(非破壊)という画期的な方法なのです。
まだ試験運用中ですが、システムを通過する99%以上の魚が「不検出」です。
「私たちは、私たちが獲った魚が安全だ、ということをアピールして、私たちの仕事を、生活を、そして海と石巻を守っていきたいのです」
こうおっしゃるのは、石巻魚市場(株)の須能邦雄社長。
「短時間で多くの魚をしっかりと測定できるシステムです。検査の体制をしっかりつくりあげて、石巻の魚は安全で、安心して食べられるのだと世界に向けて発信していきます」
機器は、魚の重さを量ることもでき、魚種ごと、海域ごとに測定することも可能。
測定スピードも、これまでの1㎏30分から、1時間1400匹へと大幅に短縮できます。
全長2mのキハダマグロぐらいまでなら大丈夫。今後はトロ箱(魚を入れる発泡スチロールの箱)ごとベルトコンベアーに載せられるようにしたいとのこと。
何よりもスピードアップすることで、新鮮なうちに測定を終わらせることができます。
数字は、ウソをつきません。
検査体制がしっかりと構築され、一層充実していけば、もっともっと多くの人に石巻の魚を安心して食べてもらえるようになるはずです。
震災前の石巻漁港には、東洋一の大きさを誇る900mの大屋根がありました。
陸揚げ岸壁は長さ1000m。水揚げ高は全国第3位、さらに200社以上の水産加工会社、そして多くの関連企業がありました。
震災から2年半。50%以上の関連産業が操業を〝再開〟しています。
そして魚市場の大屋根の新築工事も、今冬からスタート。
石巻の前海は、世界三大好漁場の1つといわれる「三陸沖」。
日本屈指の水産都市の復興は、海洋国家ニッポンの元気の源でもあります。
石巻魚市場株式会社
http://www.isiuo.co.jp/index.html
関連記事をこちらでもご覧になれます。
<宮城から感謝をこめて> 石巻市 石巻魚市場
〝水産都市〟の名にかけて、見せるぞ、石巻の底力!
震災で、人もまちも傷ついたけれど、三陸の海はやっぱり私たちの誇り。
https://sites.google.com/site/kanshamiyagi/home/ishinomaki
(取材日 平成25年9月6日)
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、震災復興を目指して歩もうとする多くの人たちの足もとに、さまざまなカタチで、からみついてきます。
あの事故さえなければ、津波被害からの復興に、もっと多くの力や心を集められたかもしれません。
でも、もう起きてしまったことです。今も現場では、多くの作業員の方々が、危険と背中合わせの中で、懸命に闘っています。
とにかく一刻でも早く、そして正しく、間違いのないように収束させてほしい……と、福島の人も、日本中、世界中の人が祈り、願っています。
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石巻魚市場の陸揚げ岸壁。 港の向こうは牡鹿半島方面です |
一方、漏れ出した放射能に対し、私たちは、正しく付き合っていかなければなりません。
過小だったり過敏だったりする情報に振り回されないで、正しい数値、正しいデータを元にして、正しく判断しなければいけません。
「風評被害」は、東北地方をはじめ東日本の広い範囲で、農林水産物の出荷への「足かせ」になっています。
セリ開始直前の石巻魚市場。 奥の事務所で、入港した船や魚の情報が公開されています |
「〝お上〟の出してくるデータは信じられない」という方も多いみたいです。
誰の言うことが正しいの? と不信が増幅しています。
では、漁港という〝最前線〟で測定されるデータはどうでしょう?
8月30日、石巻魚市場株式会社の仮設事務所で、水揚げされた魚をまるごとコンベアーに載せて、センサーを通過させることで放射能の測定ができる機器がお披露目されました。
これは、東北大学生活環境早期復旧技術研究センターと石巻魚市場が、昨秋から実用化を目指して開発を続けてきたもの。
全国でここにしかない〝オリジナル〟の機器です。
名前はちょっと長めですが「連続個別非破壊放射能汚染検査システム」といいます。
向こう端から魚をコンベアに載せて送り、 測定結果に従って手前で三方向に振り分けられます |
ベルトコンベアーが延びる全長約12mの機器で、ベルトの下、約8mに渡って放射能センサーが120本設置されています。
ベルトコンベアーの上を、2.5秒に1匹ずつ魚を載せて送ると、機器の出口では、1㎏あたり100ベクレル以上(国の基準値)、50ベクレル以上(要注意値)、そして50ベクレル未満(安全)の、3つに自動的に振り分けられます。
石巻魚市場では、現在、毎朝4時から、放射能測定検査を行っています。
その方法は、魚数匹をすりつぶしてミンチ状にした検体を最低1㎏つくり、それを測定器に入れ、30分以上かけて検査するという方法です。
午前4時というのは、セリが始まる2時間半も前。セリが安心して行われるようにするためです。4時から検査を行う漁港は、日本中でも石巻魚市場だけです。
これは9月2日の写真です。検査結果は毎朝こうして、魚種ごと、海域ごとに表示されます。 ちなみに全部不検出でした |
出荷を自粛すべき魚種についても 日付、海域と併せて情報を正しく公開しています |
しかも、ほとんどは放射能「不検出」。大事な資源をすりつぶして、食べずに捨ててしまうなんて、漁師さんにしてみたら、たまったものではありません。
(バラされるだけでゴミにされる魚もかわいそうです)
でも、「連続個別非破壊放射能汚染検査システム」は、魚体を順番に流すだけ(連続)、しかも一体ずつ(個別)、魚も解体しなくてよい(非破壊)という画期的な方法なのです。
まだ試験運用中ですが、システムを通過する99%以上の魚が「不検出」です。
こちらは活アナゴのカゴ。牡鹿半島や金華山沖合は、牡鹿アナゴをはじめ 金華サバ、金華カツオ、金華ぎん(銀ザケ)など、築地でも高値を呼ぶ〝ブランド魚〟の宝庫です |
「私たちは、私たちが獲った魚が安全だ、ということをアピールして、私たちの仕事を、生活を、そして海と石巻を守っていきたいのです」
こうおっしゃるのは、石巻魚市場(株)の須能邦雄社長。
「短時間で多くの魚をしっかりと測定できるシステムです。検査の体制をしっかりつくりあげて、石巻の魚は安全で、安心して食べられるのだと世界に向けて発信していきます」
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石巻魚市場の須能邦雄社長 |
市場には、2年6カ月前の傷跡も まだ残されていました |
機器は、魚の重さを量ることもでき、魚種ごと、海域ごとに測定することも可能。
測定スピードも、これまでの1㎏30分から、1時間1400匹へと大幅に短縮できます。
全長2mのキハダマグロぐらいまでなら大丈夫。今後はトロ箱(魚を入れる発泡スチロールの箱)ごとベルトコンベアーに載せられるようにしたいとのこと。
何よりもスピードアップすることで、新鮮なうちに測定を終わらせることができます。
数字は、ウソをつきません。
検査体制がしっかりと構築され、一層充実していけば、もっともっと多くの人に石巻の魚を安心して食べてもらえるようになるはずです。
朝の光の中、地元の小さな船が活アナゴを運んで来ました。 大型船も小型船もやってきます。 水産県・宮城の漁港が取り戻した朝の風景です |
震災前の石巻漁港には、東洋一の大きさを誇る900mの大屋根がありました。
陸揚げ岸壁は長さ1000m。水揚げ高は全国第3位、さらに200社以上の水産加工会社、そして多くの関連企業がありました。
震災から2年半。50%以上の関連産業が操業を〝再開〟しています。
そして魚市場の大屋根の新築工事も、今冬からスタート。
石巻の前海は、世界三大好漁場の1つといわれる「三陸沖」。
日本屈指の水産都市の復興は、海洋国家ニッポンの元気の源でもあります。
石巻魚市場株式会社
http://www.isiuo.co.jp/index.html
関連記事をこちらでもご覧になれます。
<宮城から感謝をこめて> 石巻市 石巻魚市場
〝水産都市〟の名にかけて、見せるぞ、石巻の底力!
震災で、人もまちも傷ついたけれど、三陸の海はやっぱり私たちの誇り。
https://sites.google.com/site/kanshamiyagi/home/ishinomaki
(取材日 平成25年9月6日)